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リンキング縫製とは?
リンキングは横編ニット特有の縫製であり、ミシン縫製とは異なり、編立てとのかかわりが深い一種特殊な縫製方法である。それは横編ニット生地の持つ特性、すなわち、
(1)成型性
(2)表面効果性
(3)伸縮性によるところが多く、これらの特性を満足さす縫製方法として考え出されたものである。
基本的には編地にアラメ(ルーズコース)を作ることにより、そのアラメのニードルループを一列に並んだポイント針に刺し、2つの編立てされたパーツをチェーンステッチでつなぎ合わせる方法である。

リンキング縫製の特徴

  1. 正確である
    ループ数を数えてポイント針に目刺して縫うので縫いずれがなく、洗濯後も型くずれしない。縫製の単位がセンチでなくループ数である。

  2. 縫い代がない
    布吊およびジャージー生地に比べて横編生地は肉が厚く、表面効果性が高いためミシン縫製の3つ折り、4つ折り始末ではゴロつきが多いが、ループとループを縫い止めるので縫い代がいらず、すっきり仕上がる。

  3. 伸縮性に富む
    両方の編地のループとループを同時に目刺し、かがり縫いをするため伸縮性に富むと同時に、縫い目が生地になじむ。

  4. 柄合わせが容易で、編目を追って縫うことができる。

リンキングの用途

  1. 地縫い(成型品のリンキング縫製)
    編成時にループ数を増減しながら形作って編む成型品(前身、後身、柚)の縫製を行うことを地縫いという。地縫いには肩っぎ、柚つけ、脇縫い、柚底縫いに分類されるが、ループの継ぎ方は(1)ループとループ(2)ループと編耳(3)編耳と編耳などデザインにより、縫製個所によって変わる。脇縫い、柚底縫いおよび柚ゴム、裾ゴム縫いはカップシーマーで縫うことが多く、特に運動量の多い脇縫い、柚底縫いは二重環縫いのカップシーマーで縫う。

  2. パーツ縫い(カット&リンキング品
    カット&リンキング品の地縫いは編耳がないためオーバーロックミシン、本縫いミシンで行い、横編機で編まれた付属品を用意して、これを編地本体にリンキングでつけることをパーツ縫いという。パーツ縫いに使われているリンキング手法は襟付け、前立付け、ポケット付け、柚ゴム・裾ゴム付け、ボタンホール、デザインの切り替え線など広範囲、多岐にわたっている。

付属編とリンキング縫製

ニットドレスのつくり方は、一般にはカット・ソーンの方式を用いるが、特にリンキングづかいの多いものをカット・アンド・リンキングといっている。さて、リンキング縫製とは環縫方式であるが、一般の環縫とちがうところは、ループとループのかがり縫いをするということであり、従って縫目が目立たず美しいし、伸縮性も編地に合わせられる。

リンキングは一般に単環式を用いている。二重環式のものは、特に強度を要する場合に用いられるが、単環式はど縫目がきれいでない。リンキングを手で行う場合をハンド・リンキングといい、手間はかかるが地編と地編のつなぎ目が解らないほどになる。ニットドレスの付属編として、衿、前立て、裾、柚口、ポケット、ポケットフラップ、ベルトそのほかがあるが、これらを本体編地にリンキング付けする場合に次のような方法がある。

付属編とリンキング・テクニック

  1. はさみ付けリンキング
    属編を中心からダブルにして、これによって本体編地をはさむ方式のダブル・リンキング、およびゴムの付属編の先に袋編をまわし、この袋の天竺によって本体編地をはさむ方式のサンドイッチ・リンキング。
  2. シングル・リンキング
    1枚の付属編を折り返さないで、本体編地の端末にリンキングをする。この場合は本体編地の裁断部のほつれ防止に捨てオーバーをかけておく。

リンキング縫製のポイント

リンキングのゲージ選定
リンキングは編機と同様にゲージがあり、編地のループの大きさによってリンキングミシンのゲージが決定される。放射状にポイント針が配列するダイアルリンキングと、直線上にポイント針が配列するフラットリンキングでは、同じゲージ表示でも若干差があり、試縫いしてゲージを選定する必要がある。横編機に対するリンキングゲージの選定は編地の編組織、度目、原糸の形状、デザイン等によって影響され、一概に言えないが基本的なゲージ選定は下表の通りである。 目刺しするループは必ずニードルループを刺す。ニードルループをダイアルリンキングで刺す場合は、カタカナのハの字に見えるループであり、フラットリンキングではループを横から見るのでハの字が横に見える。シンカーループを間違って刺すと、糸を解いた時に目が抜けて目落ちの原因となる。以下、パーツ縫いの操作手順と目刺しのポイントについて記す。
編機のゲージリンキングのゲージ
天竺編のゲージゴム編のゲージ
14G16G16~18G
12G14G16G
10G!2G14G
8G8~9G10G
5G6G7G
  1. ポイント針のピッチに合うように付属編を右手で引っ張りながら(フラットリンキングでは左手)、左手の親指と人差し指で(フラットリンキングでは右手)ポイント針にルーズコースのニードルループを刺す。ダイアルとフラットでは手の使い方がまったく逆になるため、併用できる人は少ない。大切なのは、右手でどの程度引っ張るか、引っ張りが強いとループが変形し、引きが弱いとゴム日の裏側の目がみえない。目刺し技術としては天竺よりゴム目の方が難位度が高い。

  2. 身頃編地を刺す。縫い代が手刺しなので縫い代の幅を均一に入れるのがポイントで、身頃の刺し方ひとつで縫い映えを左右する。特にイセの入る商品については注意を要する。また、耳端のあるものは編地の目を通し刺すこと。

  3. シングルリンキングはA、Bの工程で完了であるが、ダブル、サンドイッチ、パイピングリンキングはもう1度付属編を身頃編地め上にかぶせてアラメ(ルーズコース)を刺す。特に袋編(サンドイッチリンキング)の端の目が刺しにくいので熟練を要す。

  4. フラットリンキングの場合は目刺しが終了すると手回し(またはモーター)で縫う。ダイアルリンキングではBの工程が始まると同時に縫い始め、Bの工程が終了する時点ではCの工程はほぼ終了し、Aの工程をスタートしている。

リンキング縫製の留意点

  1. 付属類の良し悪しがリンキングの生産性、品質に大きな影響を与えるため、必ず試編みを行い、試縫いして編立てすること。

  2. 甘すぎる度目のものは特に刺しにくく、ループの形状が正三角形になるように糸取り、度目などを考慮すべきである。

  3. 付属編のアラメの次のコースから4コースは友糸で編むことが必要で、友糸を使わない場合でも、友糸と同じ太さの糸を使わないと生地が折れて刺しにくくなる。ただし、友糸が獣毛の場合で刺しにくい場合は、アラメの次のコースを他の色もしくは他の糸に変えると刺しやすい。

  4. 襟回りのリンキングはダブルにし、引っ張って30cm以上、裾ゴムリンキングは引っ張って60cm以上になるよう糸調子、付属編のチェックをする。

  5. 単環縫いのため、縫い終わりの環を必ずタップしておくこと、またリンキングの縫い部分をオーバーロックで切る場合は、必ず環止めを行う。

  6. ほつれやすい身生地には捨てオーバーロックをかける。また、イセの多い商品にもオーバーロックまたはシャングで平均的に縮め、リンキングを行う。

  7. 身生地の薄いものの糸調子は注意し、特に地縫いの肩っぎ、柚つけ、トックリ襟のカラリンキングなどはきつくなりやすい。横編ニットのもつ風合い、機能性、柔らかさを表現するためには、リンキングにまさるテクニックはない。ヨーロッパの最高級のニット商品にはいたるところにリンキングのテクニックを発見するのば、その無限な可能性と必要性を証明しているように思われる。